鹿児島県有数の観光地である指宿温泉にある指宿白水館は、1947年創業の、ゆったりとした松林の日本庭園、約1000坪の大浴場「元禄風呂」、天然砂むし温泉が楽しめる南九州随一の温泉旅館である。
2012年9月、施設内で使用する7つのボイラーのうち2つの重油ボイラーをLPガスボイラーに切換え、大幅な使用エネルギーとCO2排出量の削減を実現した。
CO2排出量削減の取り組みと老朽化した重油ボイラー
指宿白水館は、改正省エネ法上の、第二種エネルギー管理指定工場に指定されており、年平均1%以上の使用エネルギー原単位低減への取り組みが求められている。
その一方で、温泉施設や客室の給湯用に使用していた重油ボイラーは、設置後19年を経過した頃から、給湯タンクに溜まるお湯の温度が導入当初ほど高まらず、熱効率が悪化する傾向にあった。こうしたボイラーの熱効率の低下は、即クレームに繋がるわけではないが、シャワー温度の低さや水量の弱さ等は、宿泊客の表面化しないフラストレーションとなり、施設の快適性に対する評価を下げ、大量のお湯を使用する繁忙期にはクレームの元となるリスクを含んでいる。メンテナンスや修理を担う従業員は、機能の維持に努めつつ、そのような危険性を危惧していたという。
地元ガス会社との雑談がきっかけ
2012年早春、重油ボイラーの故障が頻発してきた為、入替えを検討する事となった。その折、厨房用のコンロと給湯器で取引していた地元ガス会社の担当者との雑談で何気無くその話をしたところ、LPガスボイラーの提案を受けた。地元ガス会社には、それまでのガスの取引やガス機器故障時に担当者が迅速に駆けつけてくれたことから大きな信頼を寄せており、気軽に相談を行うことができた。雑談とLPガスボイラーの提案から決定まで検討期間は4ヶ月と比較的短期間であったものの、対応自体の早さとガス会社への信頼によりほぼ二つ返事で提案をOKしたという。
また、原油の単位当たりの価格(円/kl)に対し、LPガスの価格(円/m3)は倍近い値の為、元々LPガスには割高な印象を持っていたが、同熱量に換算すると価格が近しい値になるという説明を受けその不安も払拭された。
LPガスバルク貯槽(2.4t)
元々、厨房用のコンロと給湯器で利用していた。
大幅な使用エネルギーとCO2排出量の削減に成功
切り替え後、館内のエネルギー使用量は灯油、A重油、LPガスの合計で前年度の約87%、約6000GJと大幅に低減し、CO2排出量は対前年比77.1%、約95tの削減につながった。光熱費の削減にもつながっており、担当の室屋氏はLPG利用の効果を強く実感しているという。また、故障やメンテナンスといった機器への対応は設置後1年目という事もあり格段に減少しており、メンテナンスに関わるコストや従業員の負担軽減が実現し満足している。
指宿白水館はこれからも省エネ、CO2排出量削減を目指し、ボイラー交換や省エネポンプ、LEDへの取り換えなど積極的に行っていく予定だという。今回そのような経営方針でCO2排出量の少ないLPガスは、まさにマッチした燃料であった。
巴製 温水ボイラー
(熱出力:698kw)
(熱出力:465kw)
貯湯タンク