燃料転換効果
省エネルギー率 |
46.6% |
CO2排出削減量 |
19.6t |
原油換算燃料削減量 |
6.3KL |
武田紙器株式会社は、1962年10月、東京都で段ボール箱の製造会社としてスタートした、段ボール箱・紙製品・包装資材の製造・販売メーカー。創業当初は簡易な段ボール箱を製造していたが、近年は取引先からの要望もあり、流通用の素材・形が特殊な段ボール箱、更に商品用の小箱の製造とデザイン、そしてアッセンブル・包装も請け負っている。
製品の安定供給と高品質の維持のために
創業当時の50年前はシンプルな段ボール箱を、取引先の工場に納品していた。その後取引先が多様化していくのに合わせ、武田紙器の製品にも変化が表れる。取引先の商品に合わせ、少しずつ取扱い製品の幅が広がっていったのだ。輸送用カートンより、個包装用パッケージまでを扱うようになる。
この頃には、文房具、玩具、化粧品のパッケージ、店頭用の紙製販促品も手掛けるようになり、20余年前に現在の柏市に移転した。15年前には千葉県内の別の場所で、様々な製品のセットアップ作業を請け負いはじめる。そして現在から3年ほど前に、工場の隣に柏アッセンブルセンターを立ち上げた。アッセンブルとは「集める」「組み立てる」の意。最近では中の商品の個包装、つまり一次包装まで請け負っている。
燃転を考え始めた理由は二つ。一つは、東日本大震災の影響で同工場の地域が計画停電の地域になり、エネルギー供給が不安視されたこと。もう一つは、製造の内容が複雑化するにつれ、機械が高性能になっていき、電気代が高くなってきたこと。高速で複雑な印刷を施すため、機械のモーターがどんどん増えた結果である。
老朽化はあったものの、故障等の決定的な理由はなかったが、それまで全く気に留めていなかった電気代について今後の試算をしてみた結果、同社取締役総務部統轄 郡氏は燃転を考えはじめた。
製品の説明をする郡取締役
緻密な設計で省エネルギーとコスト減に成功
郡氏は、以前から情報収集を行っており、燃転を考え始めた頃はGHPと太陽光発電で迷っていた。しかし「エネルギー使用合理化事業者補助金」の情報を得て、興味を持ち、電気からガスへの切り替えについてLPガス事業者に連絡を取り相談したところ、この時の対応が、素早く親身で的確であったことから、一任することを決めた。
LPガス事業者と話し合い、燃転は空調設備で行うことになった。試算と設計の結果、省CO2率は54.5%。ランニングコストも▲50%が見込まれた。工事期間は2015年10月~11月で稼働開始は12月25日となった。室外機の置き場は工場前と裏の二ヵ所。工場前は、普通車三台分の駐車場が軽三台用に縮小された。1tバルクの場所はもともと重油タンクがあった場所を利用。残量が中身が60%になった時と、40%の時に電話回線で信号が届くシステム。充填はその信号に合わせて行われる。空調用のため季節によって使用量に差があるため、定期配送だと無駄になることを想定した。
メンテナンスについては、重油のときは減ってきたら連絡しなければならなかったこと、充填中に油がはねたりこぼれたりしてタンクに汚れがついたこと、煙突からの重油垂れや煤で駐車中の車や壁にしみができてしまったこと等が心配なくなった。また、重油だと暖房に時間がかかること、捨てる時産廃処理が必要であったが、これも今は考えずに済んでいる。
室内機は搬入経路、置き場所に少し検討を要したが、工場内の設備(製品を運ぶローラーが線路上に張り巡らされている)を利用させてもらうことで解決。工場は二階建てで、冬場は一階の暖気が上がることを計算し、二階の設定温度は下げた。流れ作業を行う工場設計となっており、勤務者のいる位置が決定されることを踏まえ、元々ダクトでピンポイントで風を送り込む設計にしていたが、全体送風と合わせると無駄な送風が減り、効果大となった。室内機はこのダクトの配置も考えた結果、一階二階それぞればらばらに配置されている。
「最近のGHPは本当に高効率で、思ったほどガスを消費して頂けない、というのが唯一の誤算でした。ガス会社としては少しだけ残念です」と、LPガス会社担当者は冗談交じりに話す。
ヤンマー製GHP室外機
1tタンクと、室内機
柔軟な発想でビジネスチャンスを拡げていく
武田紙器株式会社が、パンフレットや名刺、工場の看板に大きく掲げている五つのアルファベット「STOTS」は、五感をイメージしたもの。See、Touch、Open ear、Taste、Smell、を研ぎ澄ませて仕事に臨みましょうということ。
郡氏は「私共の製品は、外から中に進んでいったんです。大きいものからどんどん小さいものに・・・『箱がある』ということは『中に入れるものがある』ということで『じゃあそれもつくりましょう!』『そして入れましょう!』というような」と話された。
同社のビジネスに対する柔軟な発想は、節電においても燃料転換というひらめきで発揮された。環境方針の「地域社会との共生を基本に環境優先の理念に配慮する」と一致する結果も得られ、空調以外のEHPをGHPに転換する計画もあり、現在は、事務所を含む会社全体で効率よく省エネ・環境負荷低減に貢献できる取組みおよび設備改修を進めていく予定。
工場内の様子