ガスで茹でると麺がうまく泳ぐ

ガスで茹でると麺がうまく泳ぐ

燃料転換効果

省エネルギー率 15%
CO2排出削減量 20%
燃料削減費 235万円/年

※2013年度と2016年度の比較

民サ麺業株式会社は、昭和47年に創業した香川県高松市にある麺類製造会社。讃岐うどん、日本そば、だんご汁、ラーメン等を製造し全国へ出荷している。その種類たるや、麺だけで200種類以上、商品としては300種類を超え、少量多品種を自他ともに認める会社である。民芸品販売から培った各地の土産物屋を中心とした販路で、様々な要望に合った麺を製造・販売している。

民サ麺業株式会社:外観

会社・従業員を守る決断そして設備更新

香川氏が民サ麺業の社長に就任したのは平成26年、それまでは同業他社の製麺業に従事していた。民サ麺業は、民芸品の販売会社であった「民芸サヌキ」が前身で、製麺業へと変化したが、前任社長の体調不良により、突然、香川氏に白羽の矢が立った。当時51歳、迷いもあったが会社と従業員を守るため社長就任を決断したのだった。

まず取り組んだのは、衛生面を第一に考えた工場の改修。そして限界に来ていた重油ボイラの更新であった。長く製麺業に携わっていた香川社長は、設備会社からLPガスボイラの提案があったときも、何の迷いもなかったという。「もともと私はガス派だったんですよ。うどんやそばといった麺や出汁もガスで対流させるとうまく泳ぎ、それが味の違いになる。他社の工場でLPガスを使っているところも知っていたし、不安はなかったですよ」

敷地内に湧き出る仕込み水。

導入した980kgバルクと
三浦工業(株)製のLPガスボイラSU-500ZS

ここまでとは思わなかった。

民サ麺業では、製麺後に袋詰めしたものを蒸気滅菌しており、その熱源として重油ボイラを使用していたが、重油ボイラは20年程度使用していたこともあり、メンテナンスの時間・回数も増えており、いつ止まるかもしれないという限界であった。更新にあたっては、設備会社とガス会社の提案により、980kgバルクと三浦工業(株)製のSU-500ZSを設置することとなった。

重油残量の確認、発注、管理、そしてボイラのメンテナンスとかなりの手間がかかっていたが、LPガスは残量20%でガス会社が自動的に充填、ボイラは遠隔監視システムやメーカーメンテナンスのおかげで問題は全てなくなった。

改めてデータを見返してみたというが、燃料費だけでも年間235万円の削減ができ、「正直、ここまで差が出るとは思っていなかった」と驚いていた。これは、ボイラの高効率化もあるが、従来の重油ボイラは老朽化による出力の不安定さから出勤と同時に起動させていたのに対し、LPガスボイラは製麺のタイミングに合わせて起動できるので、作動時間も短くできることが寄与しているとのこと。予想外の効果としてボイラ室の温度が下がり、従業員の負担が軽減されたこともあるという。

製麺工程と滅菌作業

製麺工程と滅菌作業

日常のメンテナンスコストも低減

従来の重油ボイラーは2台、酒米を蒸かす1ton/hのものと、日本酒の瓶詰時に使う750kg/hのもの、日常の点検や管理などを個別に行わなければならず、重油は燃焼する時にススも出るし、安全装置が付いているとはいえ、地下タンクから待ち受けタンクへ重油を移すというリスクも大きかった。今回の更新では800kg/hのLPガスボイラー2台に入れ替えた。運転状況によって2台をインバーター制御する事で、必要な時に必要なだけのエネルギーを使えるようになった。またLPガス化によりボイラーが煤煙発生施設及び危険物取扱所の対象外となり、行政対応の手間が簡素化された。これまでのところ大きなトラブルもなく、メンテナンスの手間が省けていることを長谷川社長は評価している。

夢はアンテナショップ

これまでは全国各地の土産物屋を中心とした販路で、様々な麺を製造販売してきたが、香川社長の夢は近くにアンテナショップを作りたい、と話していた。それも、うどん県・香川にありがちなセルフサービスの店ではなく、揚げたての天ぷらやご飯ものも扱える、真心のこもったフルサービスの店舗だという。「まずい麺は口に入れた瞬間にわかる」という香川社長は、ガスの火で、うまく麺を泳がせてくれるに違いない。

香川社長

会社の概要

民サ麺業株式会社
香川県高松市勅使町652-3
代表者:香川 隆昭
設立年月日:昭和47年
従業員数:54人
URL:http://minsa.jp

日刊工業新聞「ニュースイッチ」の取材による記事