1930年に創業した株式会社セキヤ食品工業は、三河湾で採れるアサリ・ハゼ等の新鮮な原料を佃煮に加工することから始め、現在では数多くの佃煮等を製造している。近年の食の変化から、最盛期の忙しさは潜めたものの、青魚は成人病予防・特に動脈硬化予防に効果があると注目されたのを機に、健康志向の現代人に魚の甘露煮が見直され、安定した需要を得るようになった。現代の食生活はめまぐるしく多様化し、昔ながらの味を大切にしている佃煮メーカーとして、伝統の味の普及と発展、安全で安心して食べられる商品開発に努めている。
火の神、46年間使用した炉筒煙管ボイラ「補助事業の良い連鎖、広がり」
セキヤ食品工業は、創業当時から、佃煮の魚の素焼き用にLPガス(500kg容器×4本)、煮る工程のためのボイラ用にA重油を使用していた。
関谷社長(26歳)が社長に就任したのは23歳、その時は設置以来46年間、伊勢湾台風にも負けずセキヤ食品工業の守り神的存在でもあったボイラは限界を迎えていたが更新できずにいた。
しかし、お取引先が、4~5年程前に国の補助金を活用しLPガスへの燃料転換に成功した事例を以前から聞いており、LPガス販売事業者と協力してボイラ更新に踏み切った。
これまでの国の補助事業の積み重ねが、若い社長の燃転決断を後押しする結果となったのである。
ボイラとバルク貯槽、そして空温式蒸発器の導入
検討の結果、2.9tバルク貯槽1基、ボイラは三浦工業製のSQ-800ZUを3基設置することとなった。
ボイラを3台とすることで、蒸気必要量のインバータ役にするとともに、トラブルの未然回避(安心)に繋げる提案であった。
問題となったのは蒸発器。
現行の電気式では大幅に電気容量が上がってしまい、工場の容量もほぼ限界の状況であったため、イニシャルコストは高額であったが空温式蒸発器を選択した。
電気代の削減で投資回収は見込める計算であったが、温水式を選ばなかったもう一つの理由は、必要ないときは動かさない(エネルギーを使わない)という関谷社長の強い環境意識からだった。
小型貫流ボイラ(三浦工業製SQ800ZU)×3基
LPガスバルク貯槽(2.9t)空温式蒸発器
A重油&LPガスからLPガス一本化のメリット
これまで2つの燃料を併用していたが、LPガスに一本化し、ボイラを更新したことにより様々なメリットが生まれた。
(1)CO2削減(年▲41.5%)
(2)ランニング費用の低減(年▲27.7%)
(バルク化による配送コストの低減を含む)
(3)新ボイラ・新システム導入による省エネルギー率(年▲31.4%)
(4)ボイラメーカーのメンテナンス体制の充実
また、以前からLPガスを使用していたことやLPガス販売事業者との信頼関係が構築されていたこともあり、LPガスへの燃転に不安は全くなかった。
善い心を持って商売すること「社会貢献、環境貢献、地元貢献」
26歳の関谷社長は言う。
「自分が社長になったとき、善いと思ったことをやっていこうと心に誓った。その形の一つが今回の燃転であった。資源が少なくエネルギーを輸入に頼る我が国においては、自社の総エネルギー需要量をミニマイズすることが、結果として環境貢献にもつながり、地元の環境保全にも結び付くと考え行動した。
子供の頃よく捕れたハゼやウナギも驚くほど少なくなるなど、環境は身近なところで確実に変化している。
常にお客様の事を考え、環境の事も考えていく事が、会社の未来にも繋がる。」
セキヤ食品工業 関谷冴基 社長
環境を守り、伝統の佃煮を守る
ボイラの更新は補助金がなくても行う予定であったが、補助金があったおかげで、すぐにやろうというきっかけとなった。環境意識を高く持つ関谷社長は、今後、工場の全電灯のLED化を予定しているという。
一方で、伝統食品である佃煮の素晴らしさを少しでも多くの人に知ってもらうよう様々な販売方法を検討するほか、学校給食への導入を積極的に働きかけ、世代を渡って伝統の味を知ってもらいたいと活動している。
佃煮を通して人を笑顔にしたいと語る関谷社長の思いは、環境への配慮からスタートしたのであった。
会社の概要
株式会社セキヤ食品工業
愛知県豊川市御津町御馬東109-2(本社)
愛知県豊川市御津町御馬梅田12-72(事務所・工場)
代表取締役社長:関谷冴基
敷地面積:1,300坪(4,298平方メートル)
創業:昭和5年3月(1930年)
資本金:1,000万円
従業員:約40名