光陽産業株式会社は昭和30年広島県福山市に創業し、その後、岡山県笠岡市に現笠岡工場を建設した。主力事業である小型平鋼の生産事業(月間1,700トン)と金属熱処理事業を長年支えてきた重油加熱炉4台を、平成22年から順次LPガス炉へと切替え始め、補助金を上手く活用しながら高い省エネ効果とCO2削減に結びつけている。
4年連続リプレース 補助金が決め手
今から30年前に設置した鋼材熱処理用の加熱炉4基とその後順次設置した3基の加熱炉について、A重油価格の高騰と熱処理加工単価の下落による利益率低下を要因としたコストの見直し及び改正省エネ法の施行等により、加熱炉本体のリプレースの検討が必要となった。ただし加熱炉本体は、既成品がないため設計から全ての作業を行う必要があった。単純にランニングコスト(燃料費)のみの比較においては従前からのA重油に優位性があり、当初は既設炉の改造を検討していたが、LPガス炉の方が省エネ性能・省CO2性能・炉内温度分布性能に優れていると判断し、燃料転換1号炉については全額自社投資で実施した。2号機からは補助金制度を利用し、毎年1基ずつLPガス燃料へとリプレースを行い、平成22年より4年連続・計4台の燃料転換を実施した。補助金の利用により、投資回収期間を圧縮できたことが決め手となったことは言うまでもない。
ガス熱処理炉
(ナリタテクノ製×3基、三建アクセス製2基)
4年連続リプレース 補助金が決め手
A重油を燃料とした加熱炉とLPガスを燃料とした加熱炉の比較において、補助金申請時の計算式によれば省エネ率は△34.6%、省CO2率は58%(△210トン)という結果となった。更に熱処理の炉内温度は400~1,050℃と非常に広い幅での温度調整が必要であるため、A重油燃料の加熱炉に比べてLPガス燃料の加熱炉の方が炉内温度管理が容易であり、炉内温度分布の精度を上げることができた。
現在稼働中の加熱炉7基の内訳は、LPガスを燃料としているものが4基、A重油を燃料としているものが3基であり、月間の消費量はそれぞれLPガスが40t、A重油が40㎘である。
LPガスバルク貯槽(2.9t)
加熱炉の実情
「小ロットでも高品質、短納期」をスローガンとしており、24時間連続稼働が基本となる加熱炉では、A重油からLPガスへの加熱炉のリプレースは加熱炉内温度調整の容易さにおいて大きく寄与している。
A重油加熱炉は構造自体が単純で月1度のメンテナンスにより機能維持が可能であった。LPガス加熱炉は炉自体の構造も複雑である分、機能性・安全性に優れている。今後はガス加熱炉におけるトラブル発生時の対応やメンテナンス時のノウハウなどを自社で検討・蓄積していくことが課題である。
燃転継続に向けた今後の課題
3年前から毎年1基ずつLPガスを燃料とした加熱炉への燃料転換を進めているが、残る3基のA重油燃料の加熱炉に関しては、低温域での熱処理加工に使用することが多く、燃料消費量の面から燃料転換制度の補助金の対象とならない。また、低温度域での熱処理に関しては、炉内温度を上げる燃料の使用量自体が少ないことから投資金額回収期間が長いことも課題となっている。
「今後、補助金対象範囲が拡大されれば、他のLPガス加熱炉への燃料転換を前向きに検討していきたい。」と担当者の櫛田氏は話す。
(左から)來山部長、櫛田技術顧問
会社の概要
光陽産業株式会社
広島県福山市田尻町沖涯2380-7
代表取締役 来山 尊
従業員 100人
笠岡工場:岡山県笠岡市新賀777
昭和45年11月開設 34,350m2(10,409坪)