和ばらの美しさを世界に発信

和ばらの美しさを世界に発信

株式会社 Rose Universe(屋号:Rose Farm KEIJI)は、「和ばら」の生産と販売を手掛ける企業。和ばらは育種家・ばら作家の國枝啓司氏とその長男健一氏によるオリジナルのばら品種で、その数は現在約60種類に上る。代表作の「mia愛子」が日本フラワー・オブ・ザ・イヤー2008でジャパンデザイン特別賞をするなど、その作品は内外から高い評価を受けている。卸売、直売店による販売の他、カフェの運営や様々なイベントの開催などを通じて、和ばらの美しさを世界に発信している。

和ばら

國枝家は琵琶湖のほとりに位置する滋賀県守山市で、父子三代に渡って続くばらの生産農家である。園主の啓司氏は父が営む農園でばらの育種や生産技術を学んだ後、2003年に独立。2014年には息子の健一氏が(株)Rose Universe を立ち上げて主に販売面を担当し、現在は親子二人三脚で事業を展開している。

当初、ばらの栽培には当時最新の方法であったオランダ式の溶液栽培(化学肥料を水に溶かして断続的に施肥する方法)を採用していた。しかし、「溶液栽培で育てたものと昔ながらの土耕栽培で育てたばらとを比較すると、土耕栽培のばらの方がバランスが良い」という健一氏の一言がきっかけとなり、改めて栽培方法を見直した結果、化学肥料をできるだけ使用せず、有機物と堆肥による土づくりを基本とした土耕栽培の全面的な導入を決断するに至る。これに当初から続けていたオリジナル品種の開発とを組み合わせることによって、独特の風合いを持つ和ばら創作の素地が整えられることになった。啓司氏は語る。「そよ風にたなびくような、しなやかなばらを創りたい」。

施設内の様子

施設内の様子

ローズユニバースの和ばら

ローズユニバースの和ばら

きめ細やかな温度管理にGHP

和ばらの栽培には、きめ細やかな温度管理が要求される。施設内の温度を昼間で27℃~30℃、夜間で16℃~18℃程度に保ち続けなければならないため、冬季の暖房だけでなく、夏季の冷房も可能なことが必須の要件であった。

以前栽培していた施設では暖房用に重油ボイラーを使用していたが、琵琶湖のほとりに位置する新たな施設では、漏えいのリスクがある重油は使いたくない。またEHPでは冷暖房が可能なものの、冬季のデフロストによって温度が思うように上がらないという経験があったことから、LPガスによるパワフルな冷暖房が可能なGHPが候補の筆頭となった。以前から付き合いのあったヤンマー(ヤンマーアグリジャパン・ヤンマーエネルギーシステム)に相談し、2年間の検討を経て、30馬力GHP6台の導入を決定。またLPガス事業からの提案もあり、災害対応型バルクと非常用発電機も合わせて導入し、災害時の対応にも備えている。

ただし、別の問題もあった。施設内の温度を適切に管理するためには、約5,400m2に広がる空間の温度ムラをできるだけ小さくしなければならない。そのためには風量を大きくする必要があるが、強い風が直接ばらに当たってしまうとストレスとなり、品質の低下につながってしまう。この課題に対しヤンマーでは、GHPのダクトを改良し、通常では一口しかないダクトを複数にすることにより、風がより静かに室内を循環するよう工夫した。その効果はまだ検証段階であるが、「EHPではこういう細かな対応はできない」と同社の担当者は胸を張る。

GHP室外機(30馬力)

GHP室外機(30馬力)

改良型ダクト

改良型ダクト

「少しずつよくする」の精神

GHPを導入してまだ間がないため、ランニングコストに関する詳細な検討はできていないが、現時点で特に不満な点はないという。今後は現在検証中の改良型ダクトの効果も含め、様々なデータを取りながら施設のオペレーションの改善を図っていく方針だ。メーカーの担当者は「園芸用施設におけるGHP運用のノウハウが蓄積されれば、関係する事業者にとって大きなチャンスになる」と語る。

将来的には「エネファームやコージェネレーションなどの採用にも取り組んでいきたい」と話す啓司氏。「溶液栽培は一回作るごとに資材を全て取り換えるので、その分経費が掛かる。また時間の経過とともに資材は徐々に劣化していくから、ある意味で最初の状態が一番よい状態と言える。それに対し自分たちの土耕栽培は、土を少しずつよくしていくという考え方。化学肥料を使わない有機栽培では、土は作れば作るほどよくなっていく。そうして出来上がった資産を、次の世代につなげていきたい」。啓司氏の経営理念に基づく設備投資には、この「少しずつよく」の精神が明確に反映されている。

國枝啓司氏

國枝啓司氏

品質重視のものづくりとLPガス

この事例は、GHPに対するユーザーの強い意向があったことがその背景にある。都市ガスエリア外の地域で、数を追わず、品質重視のものづくりに取り組むユーザーにとって、GHPをはじめとするLPガス機器は十分な訴求力を持っている。またそのようなユーザーの様々な要求に対し、GHPメーカーとの連携を図りながら綿密に対応していくことも、成功要因の一つと考えられる。本事例は、そのような観点から需要開発に取組んでいくことの重要性と可能性を示唆している。

施設内の様子

会社の概要

株式会社 Rose Universe
滋賀県守山市金森町507-2
代表取締役:國枝 健一
設立年月日:2014年6月10日
従業員数:約25名
URL:http://www.rosefarm-keiji.net/

日刊工業新聞「ニュースイッチ」の取材による記事