福島県郡山市にある学校法人郡山開成学園(関口修学園長・理事長)は、約9万m2もの広大なキャンパスの中に郡山女子大学、郡山女子大学短期大学部、付属高校、付属幼稚園を有する総合学園である。平成23年度のエコ大学ランキングで、私学部門全国第1位、国公立大を含めた総合部門でも3位を誇るエコ大学の側面を持つ一方、災害に強い自立型キャンパスの構築にも積極的で、教育界では全国から施設見学者が多数訪れる名門大学でもある。
広いキャンパスには女子寮や家政科の調理実習室など、熱需要の多い施設も多くあり、敷地内にはGHP合計129台・2,300馬力が設置されている。LPガスは980kgバルク貯槽全15基、うち1基は災害対応バルクで供給されている。キャンパス内の全施設でGHP空調が利用され、給湯の熱利用全てがLPガスで賄われている。
学園の随所に設置されたGHPは、平成8年に創立50周年を記念して設立された校舎「創学館」に導入された15台・276馬力がきっかけだった。しかし当初は、LPガスではなく都市ガス仕様のGHPを導入していた。
その後、自立分散型エネルギーを志向し、熱源を都市ガスからLPガスに順次転換していった。平成14年度からは、快適な学習環境の整備とCO2削減、防災時対応の観点から、LPガスバルク供給とLPガス仕様GHPをセットにしたシステムを5年計画で導入していった。
平成17年には、初期の都市ガス仕様GHPをLPガスに切り替えるとともに、その際に導入した980kgバルク貯槽2基のうち、1基を災害対応バルクとした。
また、太陽光発電(30kW)や夜間用蓄電池(10kW)、専用の水道システム(地下水)、風力発電、と自立分散型キャンパスとして常に先進的なシステムの導入に努めている。
また、災害に強い施設づくりの一環で、平成15年から6年計画で校舎など全15棟に耐震補強工事を行い、平成20年11月に完了した。併せて、非常用発電装置や災害対応LPガスバルク貯槽、災害対応専用水道システムなど、自立型ライフラインの整備も行った。
その後、平成23年3月11日に東日本大震災が発生し、学園のある郡山市にも甚大な被害が及んだ。当初避難所となる予定だった大講堂の天井が落下、屋上鉄塔が倒れ、従前から敷設していた太陽光発電パネルが損壊するなど大きな被害を受けた。大講堂に代わってGHP15台が設置された「創学館」が避難所となった。
それまでの災害に強い施設づくりへの取り組みが奏功し、震災時にはLPガスバルク供給やGHPがフル稼働し、地域が断水する中、専用水道システムが活かされるなど、整備された自立型ライフラインが威力を発揮した。学園施設を利用した避難所は、良好な生活環境を保つことができ、被災者の生活拠点としての役割を果たすことができた。
郡山開成学園で管財部長を務める緑川洋一さんは、「LPガスは分散型で、間違いなく“災害に強い”エネルギーであることは、3・11で証明された。特にGHPが普及するほどに電力消費量削減、環境貢献に寄与できる素晴らしい空調システムであることは、私どもも実感し証明もしている。社会のためにも一層の普及をお願いしたい」と語る。
※『GAS21vol.13』掲載記事などをもとに再編集した。
施設の概要
■学校法人郡山開成学園
理事長・学園長:関口修
名誉学園長:関口富左
創立:昭和22年4月22日
設置学校:郡山女子大学大学院/郡山女子大学/郡山女子大学短期大学部/郡山女子大学附属高等学校/郡山女子大学附属幼稚園
在籍学生総数:1,450名(平成24年5月1日現在)
教職員総数:335名(同上)
所在地:福島県郡山市開成3-25-2